障害者や高齢者を苦しめる経済的虐待とは?

予防も発見も難しい・・。経済的虐待が増加&エスカレートする原因とは何なのか?

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なんと時給200円という例も・・

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経済的虐待という言葉を聞いたことはありますか?
経済的虐待とは、「人の財産を不当に処分したり侵奪したりして、経済的な境遇の面で人に苦痛を与える虐待」のことを言います。
具体的に言うと、本人の同意無く(または騙して)、金銭を勝手に運用したり、本人の使用金額を理由なく制限することです。

ニュースでたびたび高齢者への虐待が取り上げられていますが、実は高齢者虐待の1/4が経済的虐待だと言われています。

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photo by みんなの介護

また最近では、障害を持つ人が職場で経済的虐待を受けているケースが増加していて、例えば違法な低賃金で働かされていたり、給料が支払われていなかったりなどがあります。
なんと時給200円で働かされていたというケースも!
職場以外だと、家族に年金や預金を勝手に使われるという例があります。

また障害を持つ人の中でも最も差別を受けていたのは、知的障害者だということがわかりました。
なんとその数、全体の約8割!

なぜこのような差別が起こるのでしょう?

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photo by Wallpaper

・会話などのコミュニケーションが上手く取れない人は、他人に相談や説明が難しいため虐待が発見されにくい
・仕事を教えるのに時間がかかったり、会話がスムーズにいかないことへのストレスから
・雇用側の障害者や高齢者に対する人権の意識が欠如している
・虐待している側に悪意はなく、虐待を受けている側も虐待(違法行為)だと気づいていない
・雇ってもらっているから、ここを出ても他に行く場所が無いから、と虐待を我慢してしまう


虐待を受けている側の我慢も、経済的虐待が増加する大きな理由の一つですが、雇用側も障害者の雇用状況を水増し報告しているというのも過去にありました。
そのため、最低賃金を大きく下回る給料しか支払っていないのに、国や自治体もなかなか発見できないのです。

虐待をするのになぜ雇用するのか?

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給料をちゃんと支払う気がなければ、最初から雇用しなくていいのでは?とも思いますが、障害者雇用対策として「障害者雇用促進法」という法律があるのです。

内容は

・企業は雇用する労働者の2,0%に相当する障害者を雇用しなければならない
・これを満たさない場合は、納付金を支払わなければならない
・たくさんの障害者を雇用している企業には、国から調整金が支払われる、または障害者雇用に必要な施設設備等が助成される
・障害者本人に対しては、職業訓練や職業紹介等の支援がされる


障害者を雇用するのは、企業にとっては義務だったのですね。
それに加えて、「義務付けされた人数よりも下回ると納付金を払わなければならない」となると、本来希望している人数よりも多く、障害者を雇っているという企業もあるでしょう。
納付金と表現されていますが、障害者雇用に意欲的ではない企業からすれば、ある意味罰金のようなものです。

大企業であればあるほど、たくさんの障害者を雇用することになりますから、それに比例して問題も多く起きそうですね。
先ほども述べましたが、雇用状況を水増し報告している企業は経済的虐待を隠すだけでなく、国からの助成金を受け取るために嘘の報告をしていたのかもしれませんね。

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企業にとっても、障害者雇用は企業アピールになりますから、たくさんの企業がホームページや紹介パンフレットなどに大きく記載していますよね。
今までは新聞やテレビ等で取り上げられるものは、いいニュースばかりが印象に残っていましたが、実際は複雑な事情が多くあったとは・・。

予防策や早期発見のためには?

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家族と家で一緒に生活をしていて、家族から経済的虐待を受けている場合、親戚付き合いや近所付き合いが薄れているというのも発見が遅れてしまう理由の一つです。
金銭のことなので、なかなか第三者からは発見されづらいですが、普段から周囲との人間関係を良好にしておくと異変に気づきやすいでしょう。

残念ながら通報(本人からを含む)以外に、経済的虐待の発見はほとんどありません。
そのため予防策もこれと言って、いいものが無いのです。
普段から人とのコミュニケーションを大切にし、良好な人間関係を築くことが一番の予防策なのです。

法律でも経済的虐待は禁止されている

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「障害者虐待防止法」という法律があり、全国の都道府県に障害者に対する虐待の防止や対応の窓口となる、市町村障害者虐待防止センターや都道府県障害者権利擁護センターが設置されています。
その予防と早期発見に努めてはいますが、この法律が施行されたのは2012年なのでまだまだ認知度は低いです。

今回は経済的虐待について取り上げましたが、障害者虐待の例は他にも、「身体的虐待(体罰や暴力)」、「性的虐待(性的な行為の強要)」、「心理的虐待(精神的苦痛を与える)」、「ネグレクト(食事や洗濯、介助や医療行為などを一切しない)」などがあります。

このような虐待を発見したら、障害者虐待防止の専用窓口にいち早く連絡してください。
虐待側が「指導、教育、しつけ」などと主張している、虐待を受けている側が自覚していない、という場合でも連絡や相談をして構いません。

虐待を受けている側が障害者ではなく、高齢者の場合は、それぞれの市町村にまた別の専用窓口があるので、そちらに連絡してください。
もちろん通報者、相談者の情報は秘密厳守されます。

予防や発見が難しい分、疑わしいことがあった場合は、確信が持てなくてもまずは窓口に連絡してみましょう。




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