うつ病と似ているけど違う「双極性障害」

絶好調だと思ったら急に不安や恐怖でいっぱいになる・・。もっと認知されるべき「双極性障害」の症状とは?

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うつ病と似ているけど違う「双極性障害」Photo by Pinterest



うつ病と同じ「気分障害」の一つ

一般的認知度の高い「うつ病」、これは医学的には気分障害というジャンルに分けられます。
気分障害は2種類あり、一つはうつ病で、もう一つが「双極性障害(躁うつ病)」です。
※躁(そう)・・うつとは対極した状態、気分が異常に高揚した状態

双極性障害の原因ははっきりとは解明されていませんが、遺伝子的要素環境的要素が複雑に関係していると考えられています。
また発症者の多くが、発症前は社交的で、周囲への気配りができ、ユーモアがあり、現実的に物事を考えられる人だったという共通点があります。

老若男女を問わず誰でもなりうるうつ病は、10〜15人に1人が一生のうちに一度は体験すると言われ、メディアでもよく取り上げられるので一般的な認知度も高いですよね。
それに対して双極性障害の発症者の割合は、100人に1人とうつ病の10分の1程度。
まだまだ認知度が低いために、発症しても理解者が少ないので苦労することが多いのです。

双極性障害の特徴

うつ病の症状はうつ状態だけですが、双極性障害は「双極」というくらいですから、躁とうつの正反対の状態を繰り返す病気です。

テンションが高いとき

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異常なほどに高揚した気分になり、調子が上がり過ぎたり、時には怒りっぽくなり、周囲から見ても明らかに普段のあなたとは違うと思われてしまうほどのハイ状態。

・自分が偉くなったように感じる
・いつもよりおしゃべりになる
・色々な考えが次々と頭に浮かぶ
・注意力が散漫になる
・活動的になり、ひどい場合にはじっとしていられなくなる
・疲れているはずなのにテンションが高いために休息を取らないで行動
・後先を考えず、つい今の自分が楽しいことに熱中してしまう
・例えば浪費、浅い考えでの性行為、派手な女遊び&夜遊び、投資など

単純にいつもより元気がある、ストレスを発散してスッキリした状態とは違います。

気分が落ち込んでいるとき

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うつ病とほぼ同じ。

・やる気が出ない
・マイナスな感情(不安、イライラ、焦り、悲しみ)ばかりが溢れる
・死にたくなる、自傷行為
・熟睡できない
・食欲が無くなる、または増える
・ストレスで下痢、便秘、吐き気など胃腸の調子が悪い
・原因不明の耳鳴りや難聴、めまい


この正反対の感情とどちらでもない通常通りの感情の3つを繰り返すのは双極性障害です。
しかし、通常通りの自分でいられる時間が多くないというのが一番苦労する部分だと思います。

過去を遡ると、太宰治、中島らも、宮沢賢治、ヘミングウェイなど偉大な作家も双極性障害だったと言われています。
また「不眠不休で働く」、「尋常ではない行動力や考えで大きな成功を得る」という極端な成果を出すときも少なからずはあり、躁状態のときばかりが注目され天才病などとも言われていましたが、その分の反動でガクンと落ち込む時期がやってきます。

他の障害と合併しやすい・・

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細かく分けると双極性障害にも「Ⅰ型」と「Ⅱ型」と2種類あるのですが、Ⅱ型は高揚した気分が4日以上続くというのが特徴です。
本人が「調子がいい!」と思っている時間が長いために、問題に気づきにくいのですが、摂食障害、不安障害、アルコール依存など他の障害と合併しやすくなり、そうなるとさらに深刻になってしまいます。
治療が上手く進まなくなるだけではなく、治療中にさらに感情が不安定になってしまうのです。

※摂食障害・・主に過食症と拒食症の総称。人間関係や心理的ストレスにより、過度の食事制限、または極端な暴飲暴食をしてしまうこと。

※不安障害・・理由のない大きな恐怖や不安で日常生活が平穏に送れない。特定のものや状況(動物、虫、閉所、飛行機、エレベーター、嵐など)に対する恐怖反応を起こす。この場合、高所恐怖症、閉所恐怖症などは含まない。パニック障害も不安障害の一つ。

※アルコール依存・・自分の意思では飲酒行動をコントロールできないこと。


多くの場合は「うつ」から始まる

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最初はうつ病だと思っていても、実は双極性障害だっというケースもあります。
そして治療法もうつ病とは違い、うつ状態を改善するだけではなく、うつと躁の差をどう小さくするかが治療ポイントになります。
なので処方される薬も違い、うつ病では一般的には「抗うつ薬」が処方されるのですが、双極性障害では「気分安定薬」や「抗精神病薬」が処方されます。

そして厄介なことに、双極性障害は再発率が非常に高く、一旦治ったと思っても放置しておくと再発するというケースが多いため油断は禁物です。

きちんと治療しなかった場合、躁状態のときに自分でも予想がつかない、時には常識のない行動をとってしまうことがあり、人間関係や社会的損失など周囲を巻き込んだトラブルを発生させてしまう可能性が大きくなります。
自分の思った通りに行動できないのは、想像するだけでゾッとしますね。
悪気はないのに周囲からは理解されにくいので、リストラや差別、人間関係、家庭の崩壊なども引き起こしてしまいます。

最悪の場合、自殺まで考えてしまうほど双極性障害は人生を大きく振り回してしまいます。
実際、双極性障害の患者の約2割が自殺により亡くなっています。

双極性障害はうつ病に比べると治療が難しいので苦労も多いですが、周囲のサポートと正しい治療を進めれば、安定した社会生活が送れるので、悩む前に専門医を受診するようにしましょう。



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